染色体異常をみつけたら Q&A −目次

add(9)(p22)の意味

質問:

  発達遅滞、眼瞼下垂、肺動脈弁狭窄、重複腎盂、単一尿管、停留睾丸、などの異常を持つ1歳半の男児で染色体検査を依頼したら、次の報告書が送られてきました。
        46,XY,add(9)(p22)
  この核型の意味、両親の染色体分析の可否などについて、ご教示ください。

回答:

  1.不均衡型相互転座 [03c 不均衡型転座]
  9番染色体短腕p22バンドで切断し、その断端に由来不明の染色体断片が付加(add)したことを意味します。均衡型相互転座が隣接分離して生じた不均衡型相互転座です。9p22からp末端に至るセグメントの欠失(部分モノソミー)と、由来不明の断片の付加(部分トリソミー)です。 次のように書くこともできます。
        46,XY,der(9)t(9;?)(p22;?)
  両親の染色体分析をすれば、80%の確率で親のどちらかが均衡型転座を持ちます。残りの20%では両親が染色体正常で、子の不均衡型転座はde novo(新生)です。親が均衡型転座を持っていれば、転座相手の染色体、その切断点が分かり、9pの切断点もより正確に同定できるので、子の核型も修正できます。母の核型が次のようだとすると、
        46,XX,t(8;9)(p23.1;p21.2)
子の核型は次のように書きます。
        46,XY,der(9)t(8;9)(p23.1;p21.2)mat
  均衡型相互転座の親から不均衡型転座の児が生まれたとき、次の妊娠で不均衡型の児が生まれる確率は19%です(Youingis et al., 2004)。この理由で、次の妊娠で出生前診断することが理論的に適当です。親が転座保因者で、この男児以外に表現型正常な同胞がいれば、同胞が均衡型転座保因者である確率は50%です。両親が染色体正常なら、次の妊娠で出生前診断する必要はありません。両親が染色体正常で児の付加染色体断片の由来を知りたければ、児の染色体のSKY分析をします [10e SKYとM-FISH]。
  2.重複 [03h 重複]
  9p23.1で切断し、それよりセントロメア側(近位)の断片が逆位重複していることがあります。断片が大きいときはバンド・パターンで判定できますが、小さいと付加断片と区別ができません。重複に加えて9p23.1より遠位の断片は欠失しています。inverted duplication deletionです。

文献
  Youings S, Ellis K, Ennis S, Barber J, Jacobs P: A study of reciprocal translocations and inver-sions detected by light microscopy with special reference to origin, segregation, and recurrent ab-normalities. Am J Med Genet 126A:46-60, 2004.

関連項目
  03c  不均衡型転座
  03h  重複
  10e  SKYとM-FISH

梶井 [2006年8月1日]