染色体異常をみつけたら Q&A −目次

逆位重複 + 端部欠失

質問:

  知的障害、IUGR、小頭症、顔貌異常を持つ5歳女児。新生児期に他院で染色体分析を依頼して、次の結果でした。
        46,XX,add(9)(p24)
  今度あらためてG-バンド分析とSKY分析をし、次の結果です。
        46,XX,der(9)dup(9)(p24p21)del(9)(p24)
  核型の解釈についてご教示ください。

回答:

  1)新生時期の染色体分析の結果は9番染色体のp24バンドで切断し、その先に由来不明の染色体片が付着したと解釈したものです。今度の解釈では、9番染色体p21-p24領域が逆位重複すると共に、それより遠位の部分(p24→pter)が欠失しています。逆位重複したセグメントはSKYで9番染色体と同じ色に染まるので、他の染色体由来の断片とは区別できます。いわゆるinv dup del(逆位重複欠失)です。p24→pter領域のプローブを用いて染色体FISH分析して欠失を証明すれば、さらに説得力があります。核型は次の詳述方式で書く方が簡略方式より簡単です。 inv dup del(9)(qter→p24::p24→p21: )
  2)染色体末端に近いセグメントが重複していたら、inv dup delを疑うべきです。重複領域が短いと重複が順位か逆位か見分け難いことがあるので、順位だと思っても逆位の可能性を考える必要があります。その上で端部のセグメントが欠失していたら、ほぼ間違いありません。
  inv dup delは多数の染色体で同定されていますが、最もよく解明されているのは8番短腕です(Giglio et al., 2001; Shimokawa et al., 2004)。逆位重複セグメントに夾まれてp23.1に4.7 Mbの重複していない領域があり、母がこの領域の逆位のヘテロ保因者であることがinv dup del(8)の誘因だとされています(Shimokawa et al., 2004)。この4.7 Mb領域をG-バンド分析で検出することは困難です。inv dup delの図解は上記の文献と [03h 重複] をご参照ください。8番短腕以外の染色体領域のinv dup delが、すべて同じ機転で生ずるか否かは分かっていません。

文献
  Giglio S, Browman KW, Matsumoto N, Calvan V, Gimelli G, Neumann T, Ohashi H, Voullaire L, Larizza D, Giorda R, Weber JL, Ledbetter DH, Zuffardi O: Olfactory receptor gene clusters, ge-nomic-inversion polymorphisms, and common chromosome rearrangements Am J Hum Genet 68:874-883, 2001.
  Shimokawa O, Kurosawa K, Ida T, Harada N, Kondoh T, Miyake N, Yoshiura K, Kishin T, Ohta T, Niikawa N, Matsumoto N: Molecular characterization of inv dup del(8p): Analysis of five cases. Am J Med Genet 128A:133-137, 2004.

関連項目
  03h  重複
  03j  端部欠失と中間部欠失

梶井 [2006年8月1日]