染色体異常をみつけたら Q&A −目次

胎児共存奇胎

質問:

  27歳の女性。不妊のため、排卵誘発剤を使って妊娠しました。超音波検査で胎児共存奇胎を疑い、25週で羊水を採取して染色体分析し、46,XXでした。29週で破水、分娩したので奇胎部分の絨毛を培養、染色体分析し、48,XXYYでした。児は表現型正常、女児です。
  奇胎の48,XXYY核型の成立機転について、ご教示ください。

回答:

  「正常妊娠+全奇胎」から成る双胎です [06f 双胎]。全奇胎(complete mole)は胎児が存在せず腫脹した絨毛から成り、その80〜90%は卵に進入した精子が二倍化(二倍性雄核発生)して生じます。この例は24,XY精子が二倍化し、48,XXYYになったものと推定できます。
  胎児共存奇胎は次の三種の可能性があります。どれも胎児がひとつ存在し、腫脹した絨毛と腫脹していない絨毛が混在しています(梶井, 1996)。この例は「46,XX核型の正常妊娠+48,XXYY核型の全奇胎」だと思われます。      
1)正常妊娠+全奇胎 :双胎
2)正常妊娠+部分奇胎 :双胎
3)部分奇胎 :単胎
文献
  梶井正: ヒト片親発生体の発生機構(胞状奇胎と卵巣奇形種)新川詔夫,編: 分子医科学シリーズ5. “ひとの生命の始まり. ヒト初期発生の分子生物学.” メジカルビュー社、東京、1996. 15-36 p.

関連項目
  06f  双胎

梶井 [2006年8月1日]