染色体異常をみつけたら Q&A −目次

羊水細胞のレベルIIIモザイク・トリソミー21

質問:

  15週妊婦の羊水で染色体分析を依頼したところ、次の報告書が届きました。
        mos 47,XY,+21[2]/46,XY[12]
  in situ法で培養・分析した4枚のカバーガラスのうち2枚で、47,XY.+21核型をそれぞれ1コロニーずつ同定したと記載してありました。1コロニーは分裂細胞がすべて+21(トリソミー21)、2番目のコロニーは+21細胞と正常細胞の混合だとのことです。胎児がトリソミー21の表現型を持つ可能性、追加検査の可能性についてご教示ください。

回答:

  1)培養に用いた羊水細胞のうちの少なくとも2細胞がトリソミー21だったと推定されるので、真性モザイクです。羊水細胞が常染色体トリソミーの真性モザイクのとき、胎児が同じトリソミー・モザイクを持つ確率は50%です [07d偽性モザイクか真性モザイクか]。胎児がモザイクだとしてトリソミー細胞の頻度が羊水細胞と同じ14%だと仮定すると、トリソミー細胞が20%以下ならば表現型異常を伴わないという原則に従って、表現型異常はないと推定できます [02c 常染色体数のモザイク]。ただし、羊水から分析できる細胞は少数なので、この仮定には疑問符がつきます。
  2)追加検査としては、胎児臍帯血の染色体分析(または臍帯血リンパ球間期核のFISH分析)が有力です [07c 羊水細胞の間期核FISH]。検査するか否かは、臍帯血採取の危険性と胎児が表現型異常を持つ確率を秤にかけ、妊婦の意志を尊重して決めるべきでしょう。羊水穿刺を繰り返して染色体分析することは、得られる情報が少ないので推薦できかねます。詳細な超音波検査はカウンセリングに役立ちます。
  3)北米の29染色体検査施設で羊水細胞のレベルIIIモザイクを伴った胎児97例のフォローアップ報告(Wallerstein et al., 2000)によると、妊娠を継続して出産した13例中7例(トリソミー細胞が6%〜31%、平均17%)で表現型正常、4例(トリソミー細胞が8%〜72%、平均46%)で表現型異常です。選択的流産した84例中41例(トリソミー細胞が2%〜96%、平均35%)が表現型正常、43例(トリソミー細胞が3%〜90%、平均34%)で表現型異常です。
  4)妊娠を継続したら、出生時に臍帯血を採取してリンパ球の染色体分析をすると共に、臍帯(血管を含む)の小片から繊維芽細胞を培養して染色体分析するべきです。

文献
  Wallerstein R, Yu M-T, Neu R, et al.: Common trisomy mosaicism diagnosed in amniocytes involving chromosomes 13, 18, 20 and 21. Prenat Diagn 20:103-122, 2000.

関連項目
  02c  常染色体数のモザイク
  07c  羊水細胞の間期核FISH
  07d  偽性モザイクか真性モザイクか

梶井 [2006年8月1日]